みなさん、こんにちは。
税理士の清水と申します。
今回は、エンディングノートについて、ご紹介させていただきます。
終活の一環として取り上げられることの多いエンディングノートですが、具体的にどのようなものか、少し詳しくご説明させていただきます。
1,エンディングノートとはどんなもの?
エンディングノートは、終活のためのノートで、万一のことが起きたときに、残された大切なご家族のために、考えや希望をまとめたものです。遺言書とは違って、法的な拘束力はありません。
遺言書よりも気楽に書くことができ、今までの人生の振り返りもできます。また、書き方に決まりはありませんので、自由に書くことができます。
内容や書き方は自由なのですが、具体的に何を書いたらよいのか、おすすめの記載項目を6つご紹介いたします。
なお、福岡市などエンディングノートを無料配布している自治体もありますので、ご紹介いたします。
参考:福岡市「マイエンディングノートを配布しています」
https://www.city.fukuoka.lg.jp/fukushi/chiikihoken/health/00/04/myendingnote.html
2,エンディングノートに書いておくとよい内容
(1) ご自身のこと
自分史を書いてみる気持ちで、これまでの人生を振り返ってみましょう。
ご自身の学歴、職歴、趣味、特技など。
弊社が担当したご相続人様の中にも、亡くなられたご家族の出生の場所や職歴などを詳しくご存じではない方も多くいらっしゃいます。
このほか、大切な思い出についても書かれてみるのもおすすめです。
(2) 身の回りの個人情報のこと
運転免許証、健康保険証、携帯電話、パソコン、クレジットカード等の場所など。
ただし、パスワードは不正に利用される恐れもあり、記載しないほうが望ましいです。
このほか、ペットを飼われている方は、ペットの好きな食べ物やお世話をお願いされたい方を記載されるのもよいでしょう。
(3) 財産のリスト
プラスの財産(手許現金、預貯金、不動産、有価証券など)、マイナスの財産(ローンなど)、保険金についての一覧表の作成。
財産の保管場所やどなたに何を残すのか記載されるとよいでしょう。
(4) 医療・介護のこと
かかりつけの病院、常時服用しているお薬。希望する治療、延命治療の有無。希望の施設など。
(5) お葬式・納骨のこと
宗派、喪主、遺影に使う写真、誰に知らせてほしいか、納骨の方法など。
(6) ご家族へのメッセージ
思い出の写真、家族にお伝えされたいメッセージなど。
3,エンディングノートを利用することのメリット
ご家族にご自身のことや希望することを伝えることができるほか、エンディングノートに財産のリストを記載している場合には、相続人様が相続財産を把握できるため、漏れのない正確な申告書が作成できるといった税務面のメリットがあります。
このほか、エンディングノート作成をきっかけに保険の見直しをされてみるのもよいかもしれません。
相続税の課税対象となる生命保険には、非課税という有利な規定があります。
4,生命保険金の非課税
過去の記事でもご紹介させていただいておりますので、その一部を抜粋してご紹介させていただきます。ご興味がある方は、具体例も記載しておりますので、ぜひご覧いただけたらと思います。
「生命保険金の非課税について」2024.6.1
https://www.e-souzok.com/report/archives/686
被相続人の死亡時にご遺族様が受け取られる生命保険の保険金は、みなし相続財産として、相続税の課税対象になることがあります。
生命保険の死亡保険金は、契約者・被保険者・受取人の関係によって、課税関係が変わります。
<被保険者であるお父様が亡くなった場合>
次のそれぞれの場合において、契約者が保険料を負担しているものとします。
(1)契約者:お父様 被保険者:お父様 受取人:お母様=相続税
(2)契約者:お母様 被保険者:お父様 受取人:お子様=贈与税
(3)契約者:お母様 被保険者:お父様 受取人:お母様=所得税・住民税(一時所得)
※ポイントは、被相続人(お父様)が契約者として保険料を支払っていたかどうかになります。このため、(1)が、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。
相続税の課税対象となる場合には、次の計算式で計算した金額が非課税となります。
500万円×法定相続人の数
基礎控除額を超える財産には、相続税がかかります。しかし、基礎控除額を超える部分を、被相続人がお亡くなりになる前に保険会社に保険料として支払い、お亡くなりになった後に、生命保険金としてご相続人様が受け取れるようにすれば、非課税が活用でき、相続税を減らせる可能性があります。
ご相続人様以外の方(「相続人ではないお孫様」や「相続放棄をされたご相続人様」など)が受け取られた保険金には、非課税の適用がありません。基礎控除を超える場合には、受け取られた方に相続税がかかります。お孫様が相続税を負担される場合には、通常、2割加算の適用があります(代襲相続⼈であるお孫様には、相続税の2割加算の適用はありません。)。
2割加算とは、財産を取得された方が、お亡くなりになった方の一定の一親等の血族及び配偶者以外の人である場合に、その財産を取得された方の相続税額に、その相続税額の2割に相当する金額が加算されることをいいます。
相続税は、基礎控除(=3000万円+600万円×法定相続人の数)を上回った部分について課されます。実際に計算する場合には、個別の事情に応じて、計算していきます。ぜひ一度、専門家にご相談ください。
5,遺言書の作成
エンディングノートは遺言書の代わりにはならないので、遺言書の作成もご検討されてはいかがでしょうか。
遺言書は、ご自身で作成することもできますが、正しく作成していないと無効になってしまいます。また、遺言書をご自宅に保管していると、改ざんされたり、発見されなかったり、紛失の可能性もあります。
このため、遺言書を作成する場合には、司法書士等の専門家へのご相談をおすすめします。
遺言書を作成するにあたり、専門家に相談する大きなメリットは、法的に問題がなく、形式の不備などで無効とならない遺言書を作成できることです。
6,専門家への相談
エンディングノートについては、内容や記載方法に決まりがなく、自由に作成することができます。
しかし、その作成中に税や保険、遺言書の作成のことなど、もっと知りたいことが出てくるかもしれません。
その際には、各専門家にご相談のうえ、検討されることをお勧めいたします。